日本の女性の20人に1人が乳がんになると言われています。
乳がんは「手術自体は難しくない」というのが外科医の共通認識。
乳房は、心臓や脳と違って微妙なメスさばきで命を落とすことがないから。
そのため手術件数の多さは、医師の技量の指標ではなく、総合力をはかる基本指標と考えたい。
乳がんの専門スタッフの充実度と見ることもできる。
すべての乳がん手術のうち乳房を温存した割合を温存率として表した。
しかし、温存率が高ければよいと言うものでもない。
乳房を残しても、ガンの大きさや形によって大きく変形したり、乳首の位置がずれたりするケースもあり、温存率の高低だけで治療の善し悪しは判断できない。
乳房の再建手術は乳がん手術と一緒に行なう「同時再建」と手術後に時間をおいて行なう「二期再建」がある。
同時再建の場合、手術と入院が一度で済むので、時間も費用も抑えられ、乳房を失う喪失感も感じないで済むが、乳房再建を行なう形成外科医は少なく、ガンが予想より広がっていて計画通りに行かない場合も。
二期再建は計画も立てやすく、形の美しい乳房を作りやすい。
乳がん手術中にがんが最初に流れ着くわきの下のリンパ節だけを切除し、がんの有無を調べる検査を「センチネルリンパ節生検」という。
この検査でガンの転移がなければ、それ以上のリンパ節の切除は控えられる。
従来なら、がんの転移を防ぐため、余計なリンパ節も切除してきたが、リンパ管を失うことによって起きるリンパ浮腫という腕のむくみが起こる等の術後の後遺症を防げる。
乳がん手術の前に抗がん剤で乳房のしこりを小さくし、手術範囲を狭め、より美しく乳房を残そうという治療方法。
がんの病巣が大きすぎて、温存が難しかったケースでも、術前化学療法で温存が可能になる場合もある。
温存治療には乳房内のがん再発防止のため、放射線治療が欠かせない。
しかし、放射線設備やスタッフがそろわないため、温存率が低下したり、近隣の施設まで足を運ばなくてはならないこともある。